tears of happiness.
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「おい、どうした。」
 
 
何気なく散歩に出てみた。
今宵は月も出ていて、明るい夜。
 
 
 
 
 
 
人気があまりない森の中で、
オレは目にとまった者に声をかけていた。
 
あまりにも自然な自身の行動にあきれてもいたが・・・
声をかけずには居られない、まさにそんな状況だった。
 
 
 
 
 
 
 
「貴様は言葉がわからんのか。」
「・・・そう・・・じゃ・・・な、なな、・・・・。」
 
 
打ち震えるような声で、絞り出すような大きさ。
 
 
「どこか痛むのか?」
「う・・・うう・・・・うううっ・・・・・・・・。」
 
 
 
 
ひたすら泣き続けるその者に声をかけたことを、
オレは後悔し始めていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・少しは落ち着いたか。」
 
 
時間が経った。
月の位置が変わっている。
 
 
うずくまった者は表情すら見えないものの、
泣き止み、少しは落ち着きを戻していた。
 
 
 
「通りすがりの貴方が・・・私にどうしてかまうの?」
「貴様がオレの散歩コースにうずくまっているのが悪いのだ。」
「・・・私が悪いの?」
「あ、いや、その・・・泣くな!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・悪くはない。ただ・・・放ってはおけなくてな・・・・・。」
 
 
 
 
 
 
正直になる。
素直になれる。
 
いや、
むしろ素直にならなければいけない気がした。
そうでなくては、こいつはこのままずっと此処にいるだろう。
 
・・・居場所も、無いまま。
 
 
 
 
 
「・・・無数の傷があるな。」
「うん。」
「理由を、聞いてもいいか?」
「聞かないで・・・お願い。」
「わかった。
だが、一つだけ聞かせてもらう。
貴様、名は何というのだ?」
「・・・・・。」
?」
「そう・・・。」
 
 
 
 
 
雲の影から月が現れ、の顔を照らしていく。
 
強い瞳。
白い肌。
そして・・・たくさんのアザや傷の跡。
 
 
 
 
「・・・・・、貴様、シャーマンか?」
「えっ?な、なんでそれを・・・貴方もシャーマンなの?」
「ああ。オレは道 蓮。」
「蓮・・・よかった、貴方、シャーマンだったんだね。」
 
 
 
安堵の表情に見とれる。
なんと美しい顔をするのか・・・。
 
嬉しそうに微笑むに、少し寄り添った。
 
 
 
「私、家出をしてきたの。
どこか住むところ、ないかな?」
「・・・・・理由によっては紹介しなくもない。」
「理由・・・聞くんだね、やっぱり。」
 
 
 
 
大方の予想は付いている。
やはり本人の口から聞きたいと思うのは酷だろうか。
 
オレはを受け止めようと、思っている。
 
 
 
 
 
 
「虐待だよ。
私はみんなと違うから・・・気持ち悪いんだって。」
「・・・・・長いこと、耐えてきたのか?」
「うんっ・・・・・産まれたときから・・・今この瞬間まで・・・・・。」
 
 
再び両手で顔を覆い、泣き始める。
先ほどとは違うのは、その泣き方。
 
 
 
 
 
弱いの肩を引き寄せて、オレはただ傍に寄り添っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・そんなこともあったねぇ。」
「フン。貴様はなんでも忘れすぎなのだ!」
「忘れるわけ、ないじゃん。
私と蓮が初めて出逢った大切な瞬間のことを・・・。」
 
 
 
はオレの家に住み込んだ。
長い年月が経つ。
 
 
そして今日は、出逢った日を祝していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「忘れないよ、絶対。
蓮は私のたった一人の人だから。」
「たった一人の、何だと言うんだ。」
「たった一人・・・私を愛してくれた初めての人。」
 
 
恥ずかしげもなく、はそう微笑んだ。
つられて微笑む。
 
 
 
 
 
そして、
あの日とは違った涙がの頬を流れていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Tears of Happiness.
 
 
貴様が流す涙の名前。
オレにしか流させることの出来ない、
の幸せの涙。