キラキラと光を落としながら、太陽の欠片を大地に下ろして
光に視界を奪われた後に、目に映った人に胸を締め付けられた。
「アイオリア・・・・ううん。偶々見掛けたから・・・・・・」
アイオリアが大きくなると共に、あの人に似てくるのが辛い。
あの頃はあの人よりも年下だったのに、私が年上になってしまった。
女神に許可を貰って、此処の掃除をしに良く来ていた。
ゆっくりと扉を開け中へと入れば、今にもあの人が笑顔で振り返って
誰も居ない室内で、窓を開けて換気しながら辺りを見回す。
あの人がいつ帰って来ても言い様に、掃除を欠かした事は無い。
あの人の寝室を片付けていると、普段手を出さなかった
中を絶対見ないと決めていたのに、何でか気になって仕方が無い。
私は駄目だと思う気持ちと裏腹に、手が言う事を聞かなかった。
あの人が大切にしていた物が次々と目に飛び込んで来る。
あの人らしく、綺麗に配置され大切にされていたと分かる扱い。
亡くなったあの日に、何故着けていてくれなかったのかと
悲しくなると同時に、こんなに大切にしてくれていた歓びが交差する。
いい加減、枯れてしまっても良い筈なのに涙が溢れる。
どんなに辛い事が有っても、肌を寄せ合い励まして来たのに
兄弟みたいに思ってたかもしれないけど、私はずっと想っていた。
己の足の赴く侭に森を進み、小さい頃よく遊んだ泉に着いた。
夜、他の聖闘士が心配して探しに来るまで、私は居続けた。
私の心は、今でも此処であの人を待ち侘びて居るのかもしれない。
月明かりに照らされた泉に、足を浸けて空を見上げた。
もしかして、もう二度と帰って来ないつもり?嘘吐きね。」
『彼の肉体は朽ちてしまったから、再生が難しいみたいなの。
最悪の事態、二度と再生出来ないかもしれないから・・・・・』
何故?・・・・何故、私の元には出て来てくれないの?
再び零れ落ちそうになる涙を隠そうと、泉に飛び込んだ。
暫く底で漂っていると、水面に一筋の光が目に飛び込んでくる。
この時にはもう抱き締められるような感覚は無くなっていたけど
心に何か引っ掛かるのを感じて、再び水底に身を沈めた。
目を閉じて感覚を研ぎ澄ますと、あの人に似た感覚だった。
ゆっくりと上へ向かって行こうとすると、目の前に金色の揺らめきが過ぎる。
底に目を向ければ、悲しそうなアイオロスの姿が見えた。
『私は、このまま上を目指せばいいの?それとも共に有る事を望んでくれるの?』
少しだけ頷いた彼に、私は躊躇する事無く再び底を目指した。
『すまない・・・・・今まで君の前に現れなかったのは、忘れられるのが怖かったからだ。
『いいの・・・・・これからずっと、一緒に居られるんでしょ?』
少し俯いた彼が、何かを決心したように私を見上げた。
『願わなかった日は無かったと、知っているんでしょ?』
『アイオロスと共に居られるなら、地獄でも何処でも構わない。
貴方が居ない世界なんて、生きる意味が分からないの。』
分かれ道に着いた時、ふとあの人の言葉を思い出した。
あの人の言葉に従う様に、私は自宅と反対の道を進んだ。
クローゼットから、アイオロスの着ていたシャツを出して羽織ると
「何で・・・・・・・・・・・?生き返る事、出来たの?」
「ごめん。生き返る事は可能だったんだ。でも、出来なかった。」
「あの時の、14歳の肉体に生まれ変わるのは簡単だったんだ。
「15年経った肉体になるまで、時間が掛かるんだ。」
折角、を捕まえに戻って来たんだ、当たり前だろう?」
嬉しくて、恥かしくて、思わずアイオロスの胸に飛び込んだ。
「、この際此処に住まないか?それならずっと一緒に居られるだろう?」
「あ・・・・ごめん。大切な事を言い忘れてるよなっ。、愛してるぞ。」
「自信満々に言うんだね。私が断るとか思わないの?」
「あの・・・・な。の口から聞きたいなぁ・・・なんて。駄目か?」
窺う様に覗いてくるアイオロスが可愛くて仕方が無い。
「ふふっ・・・・仕方無いなぁ。大好きだよ、アイオロスの事。」
満面の笑みを浮かべるアイオロスの胸に、強く抱き着いた。
翌日、彼が黄金聖闘士のみんなにボコボコにされるのを
『ずっと一緒に居る』って約束は、早くも破られてしまった。