** 雪 降 る 夜 **
 
〜 獅子座のアイオリア 〜
 
by SAKURA
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
雪の坂道
 
夕刻から降り始めた雪は石畳を白く覆い
 
その白が街燈の光に反射して
 
街全体がほのかに発光しているようにぼんやり明るい
 
 
 
 
 
 
 
 
人通りの多い通りを抜けるとアイオリアは坂の手前で大きく深呼吸をひとつする
 
 
君の家まで あともう少し
 
坂を登れば  に逢える
 
 
片手には小さな花束、そしてポケットの中には に贈るプレゼント
 
らしくないって笑われるかな
 
実際、双児宮で逢ったカノンに笑われた
 
 
 
「何かおかしいか? 」
 
「いや 悪い。初めて見たな、そういうお前 」
 
「どんな俺なんだ?」
 
「いかにも女に逢いに行くって感じを醸してる 」
 
「そうかな。。。」
 
「お前さ その格好、何か足りないな。ちょっと待ってろよ 」
 
 
そう言って奥に入っていくと マフラーを手に戻って来た
 
 
「これでも巻けよ 貸してやる 」
 
「いいのか?」
 
「いいから早く の所へ行けよ 足止めして悪かったな 」
 
「いや ありがとう。カノン 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
長い坂を登りきると の住む部屋が見える
 
暖かな光が灯っている戸口に立ってアイオリアはゆっくりそのドアを2回ノックした
 
すぐに扉が開いて が顔を出す
 
 
 
「アイオリア様 いらっしゃいです 」
 
 
 
その言葉と一緒にぎゅっと抱きつかれて
 
部屋の中の暖かい空気が身体を包んだ
 
突然のことにアイオリアはなすがままで
 
 
 
「アイオリア様の身体、冷たいですね 外寒かったですか?」
 
「ああ 少しな 」
 
「とりあえず中に入って下さい 」
 
 
 
部屋に入ると小さなツリーが飾られていて
 
テーブルにはカップが用意されている
 
 
 
「コーヒーでいいですか?」
 
「ああ ありがとう。それからこれ。。。」
 
 
 
小さな花束を差し出すと  の表情がぱっと輝いて
 
今度は首に抱きつかれる
 
愛しい恋人の身体いっぱいの愛情表現は、嬉しいけれど未だに慣れなくて
 
触れられる度に早くなる心臓の音を抑えるのに苦労する
 
そして結局 なすがままに身を任せるしかない
 
 
 
「ありがとうございます アイオリア様 」
 
 
 
それでもやっとの思いで の背中に軽く手を触れる
 
そしてふと  の身体から漂う甘い匂いに気づいた
 
 
 
 何か甘い匂いがするな 気のせいか?」
 
「気のせいなんかじゃないですよ ちょっと待ってて下さいね 」
 
 
 
キッチンから戻ってきた が手にしたトレイには
 
綺麗にデコレーションされたケーキと温かい飲み物が入っているポット
 
アイオリアが持ってきた花束も小さな花瓶にいけられている
 
 
 
「これを作っていたからかも知れないです 」
 
「クリスマスケーキ  が作ったのか?」
 
「はい こういうのを作るのは結構好きなんですよ 」
 
 
 
切り分けられたケーキを2人で食べて しばらくゆっくりと時間を過ごす
 
12時少し前になるとアイオリアは立ち上がった
 
 
 
 ちょっと外へ出ないか?」
 
「どこへ行くんですか?」
 
「ちょっと一緒に行きたいところがあるんだ 」
 
「いいですよ じゃあ準備しますね 」
 
「外は寒いから暖かくしたほうがいい 」
 
「は〜い わかりました 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
準備を整えた と外に出ると
 
雪は来たときよりもさらに降り積もっていた
 
 
 
「アイオリア様 寒いですっ 」
 
「大丈夫 すぐ近くだ 」
 
 
 
身を縮ませる の手をとって、自分の上着のポケットに入れる
 
暖かいポケットの中で の指先が何かに触れた
 
 
 
「何か入ってますよ?アイオリア様 」
 
「ん。。。?あっ それは。。。 」
 
 
 
逆のポケットに入れておけば良かった。。。と思った時にはもう遅くて
 
がポケットから手に触れた小さな箱を取り出す
 
 
 
「見つかってしまったな もう少し後で。。。と思っていたのに 」
 
「ごめんなさい。。。アイオリア様 」
 
「いいんだ  。開けてみてくれるか?」
 
 
 
箱を開けた が眼にしたのは美しい装飾が施されたロザリオ
 
でもそれは新しいものではなく 年季を感じさせる
 
 
 
「アイオリア様。。。これは?」
 
「小さな頃からずっと持っていたロザリオだ 」
 
 
 
箱から取り出し  の首にかけてやる
 
雪明りの中、嵌め込まれた石が鈍く光って
 
それは によく似合っていた
 
 
 
「大切なものではないんですか?」
 
「だからこそ  に持っていて欲しいんだ 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
小さな頃から
 
そのロザリオはずっと俺のそばにあった
 
兄アイオロスがいなくなった時には
 
ロザリオを握りしめて兄が戻ってくるように祈った
 
いい思い出も 悲しい思い出も
 
今は全てが終わったことなのだけれど
 
に出逢う前の自分の全てを知っているそれを
 
に贈りたい そう思った
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ずっとアイオリア様が持っていたものなんですよね 」
 
「ああ そうだよ 」
 
「これをしていればいつもアイオリア様と一緒、っていう感じがしますね 」
 
「していなくてもいつも一緒 っていうのはどうだ?」
 
 
 
いつもならきっと言えないだろう言葉も
 
今日なら言える そんな気がしていた
 
それはきっとクリスマスの魔法っていうものなのかも知れない
 
驚いたように目を見開いた をそっと抱きしめると
 
腕の中の は小さく呟く
 
 
 
「私も。。。いつも一緒がいいです 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
誰もいない雪の坂道で重なる影
 
はらはらと落ちてくる雪が少しずつ肩に積もって
 
雪の中に溶け込んでしまいそうな恋人達は
 
ゆっくりと身体を離すと笑いあう
 
 
 
 早く行こう。寒さで風邪を引いてしまう 」
 
「どこへ行くんですか?」
 
「教会だ 」
 
「教会?」
 
「12時からクリスマスのミサがあるんだ もう始まってるかも。。。」
 
「じゃあ 急ぎましょう 」
 
「光速で行くか?」
 
「それは。。。遠慮します 」
 
 
 
手を繋いで 笑いあって
 
2人は踊るように雪の降る道を走り出した
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
END