女神主催で行われたパーティーに、黄金聖闘士をはじめ女官である と文官である も参加した。
最初のうちは女神がいたこともあり、静かに食事を食べ、酒を嗜む程度であったのだが
女神がペガサスの聖闘士、星矢に伴われて席を外してからはだんだんと宴も無礼講になってゆく。
と はいくつかのグループになって飲んでいる黄金聖闘士たちの中に混じってそれぞれ宴を楽しんでいた。
「デスマスク、 に失礼だとは思わないのか?突然そんなことを聞くのは無粋だろう。」
「うるせえ アフロディーテ。お前だって気になってるんだろ?」
「酔ってなんかいねえよ。シュラのほうこそ格好つけんじゃねえよ。」
「自分でもよく分からないわ。強いて言えば好きになった人が好みってことね。」
「そう?でもそれが本当のところなんだから仕方ないでしょう?」
そう言ってグラスを空ける の白い首筋に見入る3人の男。
酒の力なのか、それともこの部屋の気温が心なしか高いせいなのか、 の頬は少し上気していて
いつもシオンの隣で一切を取り仕切っている とは少し違う印象を受ける。
不意に が立ち上がり、どこかへ向かって歩き出そうとする。
「日本ではね、こういう集まりの時は上司のところにお酌をしに行くことになっているのよ。」
じゃあね、と手をひらひらさせて去っていく の後姿を見送る3人はほっと溜息をつく。
「それを落とすのが楽しいんだろう?」ニヤリと笑うシュラ。
「まあ、過程を楽しむっていうのもいいね。」余裕げなアフロディーテ。
一方、 はというと・・・。ミロとカミュ、そしてアイオロスとアイオリア兄弟の中にいた。
隣に座っている にしなだれかかって抱きつこうとするミロ。
瞬間、カミュの小宇宙が高まったのをミロ以外の全員が感じた。
次の瞬間には の肩にかけていた右腕を凍結させられたミロが悲鳴を上げる。
「酔って暑いのであろう?その腕で冷やすのだな。 、こっちに来なさい。」
手招きされてカミュとアイオリアの間に座った はすいすいと杯を重ねていくアイオリアを尊敬のまなざしで眺める。
「アイオリア様、お酒強いんですね〜。おいしいですか?それ。」
グラスを出した に今度はアイオロスの小宇宙が高まったのをアイオリア以外の全員が感じた。
次の瞬間、アイオリアの身体は数メートル先の柱に激突していた。
「 は未成年だというのに何を考えているんだ。アイオリア。」
兄の叱責はすでに気絶している弟に届くはずもなかった。
「 、あいつも黄金聖闘士だ。すぐに起き上がってくる。」
「確かに少々スパルタではありませんか。弟子の教育というのはもっと丁寧にすべきですよ。
私はいつも氷河やアイザックにはいつもクールであるようにと諭して教えてきました。」
「あのな・・・。カミュ。アイオリアは俺の弟子ではないぞ。弟だ。」
「それはそうですが、小さい頃は貴方がアイオリアに教えていたのでしょう?」
「貴方もいつかは弟子を取るかも知れないではないですか。弟子というのはいいものですよ。私の弟子たちは・・・。」
限りなく続きそうなカミュの弟子話にいつの間にか右腕の氷を砕いたミロがそっと の背中をつついた。
「カミュが弟子の話を始めると長いんだ。避難したほうがいいぞ。」
食べ物が所狭しと並べられているテーブルに向かう を見ながら
すっかり酔ったミロは幸せな気持ちでうとうとしはじめた。
「 か、いつもご苦労であるな。余の杯を受けてくれるか?」
はデスマスクたちから離れた後、教皇シオンと童虎、そしてサガとカノンが飲んでいる場所へと向かっていた。
シオンとサガはワイン、童虎は紹興酒、カノンはウイスキーと飲んでいるものは各自ばらばらである。
シオンにグラスを渡され、注がれたワインをゆっくり舌の上で転がしながら確かめるように飲む。
「童虎、そんなことはないわよ?興味のあることだから知ってる。それだけよ。」
「今日のワインはぶどうの出来が良かった年のものだからな。」
「ほう、サガよ。お前は教皇になりすましていた頃から良く飲んでおったのか?」
図星をつかれ、鬱になるサガにカノンが追い打ちをかける。
「カノン、お前のほうこそ海底のマーメイドの海闘士とはどうなっているのだ?」
「うるせーよ。兄貴。テティスはジュリアンに惚れてたんだよっ!」
「そうだ。カノンがどうやら懇意にしていたらしいのだ。」
「お前のほうこそあることないこと に言っているではないか。」
「お主ら、 が困っているではないか。喧嘩なら外でせい。」
「シオン、気にしないで。それよりいつもお世話になっているから私からも注がせてもらっていい?」
ワインのボトルを片手に微笑む にシオンは相好を崩す。
喧嘩の場所を外に移した双子をよそに、 と童虎とシオンは酒を酌み交わすのだった。
デザートが並んだトレイの前で は目の前のケーキに夢中になっていた。
10種類全てのケーキを皿に乗せ、シャカに促されて席に着くとそこにはムウとアルデバランがいた。
「シャカ・・・。一体いくつ食べれば気が済むのです?」
そう言ったアルデバランとムウの前にも何枚もの皿が重ねられている。
この3人、もっぱら食いに走っているように見えるが、実はしこたま飲んでいたりもする。
「酒を飲んだ後は甘いもの、と決まっているのだよ。」
「シャカ、 に間違ったことを教えるのはおやめなさい。」
「少なくとも私はそうなのだ。間違ったことを言っているわけではないが?」
「ムウ様とアルデバラン様はもうお食べにならないのですか?」
「いいんですよ。 。今日は私がお茶をご馳走しましょう。」
「 、どうやらこれが一番美味しいようだが食べてみるかね?」
シャカがすすめたオレンジのムースを一口、 が口に運ぶ。
横からムウの邪魔が入って、シャカとムウの間で火花が散った。
「ムウ様。ありがとうございます。あ、シャカ様もありがとうございます。」
にこにこしながらシャカがすすめたケーキとムウが淹れた紅茶を美味しそうに口に運ぶ少女を
「アルデバラン様、このムースすごく美味しいですよ。一口いかがですか?」
にフォークを差し出され、ケーキを食べさせてもらうアルデバラン。
これぞまさに漁夫の利、と言うやつなのかも知れない。
そしてその瞬間、シャカとムウの増大した小宇宙にアルデバランが身震いをしたのを は知る由もなかった。
突然の耳をつんざくような衝撃音にアイオリアとミロ以外の全員が反応した。
双児宮の両隣でいつも兄弟喧嘩の被害を受けているアルデバランとデスマスク。
「あのな・・・シュラ、お前は知らないからそんなに悠長なことが言ってられるんだよ。」
「うるせえ!!アイオロス、今日こそはコイツと決着をつけてやる!!」
ムウの後ろに隠れていた が の姿を見つけ、走り寄る。
「 !カノン様とサガ様、すごいことになってるね。」
そして衝撃音に気付いたものの、動じず酒を酌み交わす者が2人。
「シオン様、手出しは無用でございます。これはカノンと私の問題です。」
「サガ様とカノン様、黄金(きん)色に輝いてるよ〜〜! 。」
感心したように2人を見つめる と に突っ込みを入れる者は誰もいない。
そして双子の小宇宙が増大を続け、弾けようとした瞬間、シオンの怒りが爆発した。
その小宇宙は隣にいた童虎も気付かなかったほどの素早さで教皇宮を包む。
「うろたえるなーーー!!小僧どもーーー!!!!!」
サガとカノンはもちろん、見物していた黄金聖闘士たちもシオンの必殺技の餌食となった。
と も例外ではなく、シオンによって飛ばされた・・・が。
は次の瞬間、テレポートさせられシオンの腕の中にいた。
そして はシオンの弟子、ムウの腕に抱きとめられていた。
もともと気絶していたアイオリアや眠っていたミロも例外ではなかった。災難としか言いようがないけれど。
「ムウよ。さすがは余の弟子じゃな。よく避けられたものよ。」
「いえ、もう慣れていますから。それに分かっていらしたのでしょう?私だけは避けるだろうと。」
「まあ良い。余は今から とゆっくり過ごすこととさせてもらう。」
「そうですか。では私は と過ごすことにしましょう。」
微笑んだ を抱いたまま、シオンは十二宮の階段を降りてゆく。
空からは白い雪がはらはらと舞い落ちて少しずつ聖域を白く染めはじめる。
どうやら今年のクリスマスはアリエス師弟のひとり勝ちらしい。
こうして聖域のクリスマスの夜は更けてゆくのであった。