** 雪 降 る 夜 **
 
〜 最後に勝つのは誰? 〜
 
by SAKURA
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
クリスマスの夜
 
女神主催で行われたパーティーに、黄金聖闘士をはじめ女官である と文官である も参加した。
 
最初のうちは女神がいたこともあり、静かに食事を食べ、酒を嗜む程度であったのだが
 
女神がペガサスの聖闘士、星矢に伴われて席を外してからはだんだんと宴も無礼講になってゆく。
 
はいくつかのグループになって飲んでいる黄金聖闘士たちの中に混じってそれぞれ宴を楽しんでいた。
 
 
 
 
 
 
「なあ   」
 
「何?デスマスク 」
 
「好みの男のタイプ教えろよ。」
 
「好みって急に言われてもね・・・。」
 
「デスマスク、 に失礼だとは思わないのか?突然そんなことを聞くのは無粋だろう。」
 
「うるせえ アフロディーテ。お前だって気になってるんだろ?」
 
「よせ、デスマスク。お前酔ってるだろう。」
 
「酔ってなんかいねえよ。シュラのほうこそ格好つけんじゃねえよ。」
 
いきなり私闘が起こりそうな雰囲気である。
 
「好みなんて知ってどうするつもり?」
 
「当然、そういう男になるまでのことだ。」
 
「分かりやすい奴だな・・・。デスマスク。」
 
「自分でもよく分からないわ。強いて言えば好きになった人が好みってことね。」
 
「上手く逃げたね。 。」
 
「そう?でもそれが本当のところなんだから仕方ないでしょう?」
 
そう言ってグラスを空ける の白い首筋に見入る3人の男。
 
見えない火花が散っていることは言うまでもない。
 
酒の力なのか、それともこの部屋の気温が心なしか高いせいなのか、 の頬は少し上気していて
 
いつもシオンの隣で一切を取り仕切っている とは少し違う印象を受ける。
 
それもまた彼らには新鮮らしい。
 
不意に が立ち上がり、どこかへ向かって歩き出そうとする。
 
「どうしたんだ。 。」
 
「ちょっとね。シオンの所へ行こうと思って。」
 
「何でだよ?」
 
「日本ではね、こういう集まりの時は上司のところにお酌をしに行くことになっているのよ。」
 
じゃあね、と手をひらひらさせて去っていく の後姿を見送る3人はほっと溜息をつく。
 
「高嶺の花ってやつだよなぁ。」とデスマスク。
 
「それを落とすのが楽しいんだろう?」ニヤリと笑うシュラ。
 
「まあ、過程を楽しむっていうのもいいね。」余裕げなアフロディーテ。
 
3人はお互いを微妙に牽制しつつグラスを合わせた。
 
 
 
 
 
一方、 はというと・・・。ミロとカミュ、そしてアイオロスとアイオリア兄弟の中にいた。
 
「ミロ様、何だか顔が赤いですよ?大丈夫ですか?」
 
「ミロはすぐに顔に出るからな。」
 
〜〜。酔ったみたいだから介抱してくれるか?」
 
隣に座っている にしなだれかかって抱きつこうとするミロ。
 
瞬間、カミュの小宇宙が高まったのをミロ以外の全員が感じた。
 
次の瞬間には の肩にかけていた右腕を凍結させられたミロが悲鳴を上げる。
 
「カミュ!!何するんだよ。」
 
「酔って暑いのであろう?その腕で冷やすのだな。 、こっちに来なさい。」
 
「は〜い。」
 
手招きされてカミュとアイオリアの間に座った はすいすいと杯を重ねていくアイオリアを尊敬のまなざしで眺める。
 
「アイオリア様、お酒強いんですね〜。おいしいですか?それ。」
 
「ああ、 も飲んでみるか?」
 
「はい。いただきます。」
 
グラスを出した に今度はアイオロスの小宇宙が高まったのをアイオリア以外の全員が感じた。
 
次の瞬間、アイオリアの身体は数メートル先の柱に激突していた。
 
「あ・・・アイオリア様っ!!」
 
は未成年だというのに何を考えているんだ。アイオリア。」
 
兄の叱責はすでに気絶している弟に届くはずもなかった。
 
「アイオリア様〜〜!!大丈夫ですか?」
 
駆け寄ろうとする の腕をアイオロスが優しく掴む。
 
、あいつも黄金聖闘士だ。すぐに起き上がってくる。」
 
「でも、ひどいですよ。アイオロス様。」
 
「確かに少々スパルタではありませんか。弟子の教育というのはもっと丁寧にすべきですよ。
 
 私はいつも氷河やアイザックにはいつもクールであるようにと諭して教えてきました。」
 
「あのな・・・。カミュ。アイオリアは俺の弟子ではないぞ。弟だ。」
 
「それはそうですが、小さい頃は貴方がアイオリアに教えていたのでしょう?」
 
「ま・・・まあそうだが・・・。」
 
「貴方もいつかは弟子を取るかも知れないではないですか。弟子というのはいいものですよ。私の弟子たちは・・・。」
 
限りなく続きそうなカミュの弟子話にいつの間にか右腕の氷を砕いたミロがそっと の背中をつついた。
 
そして手招きして をそっと連れ出す。
 
「どうしたんですか?ミロ様。」
 
「カミュが弟子の話を始めると長いんだ。避難したほうがいいぞ。」
 
「はい。じゃあ何か食べ物でも持ってきますね。」
 
「ああ、好きなものを持ってくるといい。」
 
食べ物が所狭しと並べられているテーブルに向かう を見ながら
 
すっかり酔ったミロは幸せな気持ちでうとうとしはじめた。
 
アイオリアが覚醒する気配は、まだない。
 
 
 
 
 
か、いつもご苦労であるな。余の杯を受けてくれるか?」
 
「はい。シオン。喜んで頂きます。」
 
はデスマスクたちから離れた後、教皇シオンと童虎、そしてサガとカノンが飲んでいる場所へと向かっていた。
 
シオンとサガはワイン、童虎は紹興酒、カノンはウイスキーと飲んでいるものは各自ばらばらである。
 
シオンにグラスを渡され、注がれたワインをゆっくり舌の上で転がしながら確かめるように飲む。
 
「おいしい!これは・・・フランスワインね?」
 
は何でもよく知っておるの。」
 
「童虎、そんなことはないわよ?興味のあることだから知ってる。それだけよ。」
 
「今日のワインはぶどうの出来が良かった年のものだからな。」
 
「ほう、サガよ。お前は教皇になりすましていた頃から良く飲んでおったのか?」
 
「うっ・・・。そ・・・そのようなことは・・・。」
 
図星をつかれ、鬱になるサガにカノンが追い打ちをかける。
 
「兄貴は酒好きの上に女好きでもあったからな。」
 
「カノン!!余計なことを言うものではない。」
 
「そうなの?カノン。」
 
「ああ。 。沢山の女を侍らせてたぜ。」
 
「カノン、お前のほうこそ海底のマーメイドの海闘士とはどうなっているのだ?」
 
「うるせーよ。兄貴。テティスはジュリアンに惚れてたんだよっ!」
 
「マーメイド?」
 
「そうだ。カノンがどうやら懇意にしていたらしいのだ。」
 
「余計なことを に吹き込むな。サガ。」
 
「お前のほうこそあることないこと に言っているではないか。」
 
「お主ら、 が困っているではないか。喧嘩なら外でせい。」
 
「し・・・しかし老師・・・。」
 
「酒が不味くなるであろう。控えよ。」
 
「シオン、気にしないで。それよりいつもお世話になっているから私からも注がせてもらっていい?」
 
ワインのボトルを片手に微笑む にシオンは相好を崩す。
 
喧嘩の場所を外に移した双子をよそに、 と童虎とシオンは酒を酌み交わすのだった。
 
 
 
 
 
「え〜っと・・・。どれにしようかな?」
 
デザートが並んだトレイの前で は目の前のケーキに夢中になっていた。
 
そこに訪れたのは乙女座のシャカ。
 
。」
 
「あっ。シャカ様。どれが美味しいと思いますか?」
 
「どれ、と言わず全て食べてみてはどうかね?」
 
「そんなに食べたら太っちゃいますよ〜。」
 
「では私が味見してやろう。こちらへ来たまえ。」
 
「シャカ様が・・・ですか?」
 
「おかしいかね?」
 
乙女座のシャカ、実は大の甘党なのである。
 
「おかしくないですけど・・・。」
 
「そうであろう?ひとつずつ皿に取るといい。」
 
10種類全てのケーキを皿に乗せ、シャカに促されて席に着くとそこにはムウとアルデバランがいた。
 
「シャカ・・・。一体いくつ食べれば気が済むのです?」
 
「いくらなんでも食べすぎだろう。シャカ。」
 
そう言ったアルデバランとムウの前にも何枚もの皿が重ねられている。
 
この3人、もっぱら食いに走っているように見えるが、実はしこたま飲んでいたりもする。
 
「酒を飲んだ後は甘いもの、と決まっているのだよ。」
 
「そうなんですか?シャカ様。」
 
「シャカ、 に間違ったことを教えるのはおやめなさい。」
 
「少なくとも私はそうなのだ。間違ったことを言っているわけではないが?」
 
「ムウ様とアルデバラン様はもうお食べにならないのですか?」
 
「ああ、もういくらなんでも食えん。」
 
「紅茶でも持ってきましょうか?」
 
「いいんですよ。 。今日は私がお茶をご馳走しましょう。」
 
「本当ですか?ありがとうございます。ムウ様。」
 
、どうやらこれが一番美味しいようだが食べてみるかね?」
 
「はい。いただきま〜す。」
 
シャカがすすめたオレンジのムースを一口、 が口に運ぶ。
 
「おいしいです〜!シャカ様。」
 
「さあ、お茶が入りましたよ。 。」
 
横からムウの邪魔が入って、シャカとムウの間で火花が散った。
 
「ムウ様。ありがとうございます。あ、シャカ様もありがとうございます。」
 
にこにこしながらシャカがすすめたケーキとムウが淹れた紅茶を美味しそうに口に運ぶ少女を
 
シャカもムウも内心はどうあれ、微笑んで見つめる。
 
が、
 
「アルデバラン様、このムースすごく美味しいですよ。一口いかがですか?」
 
「そうか? がそう言うなら一口もらおうか。」
 
「はい。どうぞ。」
 
にフォークを差し出され、ケーキを食べさせてもらうアルデバラン。
 
これぞまさに漁夫の利、と言うやつなのかも知れない。
 
そしてその瞬間、シャカとムウの増大した小宇宙にアルデバランが身震いをしたのを は知る由もなかった。
 
 
 
 
 
 
ドゴォォォォォン!!!!
 
 
 
 
 
 
突然の耳をつんざくような衝撃音にアイオリアとミロ以外の全員が反応した。
 
「げっ、あいつらまた兄弟喧嘩で私闘してやがる。」
 
また、ということはよくあることらしい。
 
「今日は他所の宮を壊さなければいいのだがな。」
 
双児宮の両隣でいつも兄弟喧嘩の被害を受けているアルデバランとデスマスク。
 
「いつもこんなにひどい喧嘩になるのか?」
 
「あのな・・・シュラ、お前は知らないからそんなに悠長なことが言ってられるんだよ。」
 
「今日はかなり本気のようですね。」
 
「ムウ、君は面白がっているのかね?」
 
「いえ、もう慣れてしまいましたから。」
 
「・・・(もはや何も言うまい。)」
 
「サガ!!カノン!!いい加減にしろ。」
 
「うるせえ!!アイオロス、今日こそはコイツと決着をつけてやる!!」
 
「カノン、私に勝てるとでも思っているのか?」
 
「当然だ!!」
 
ムウの後ろに隠れていた の姿を見つけ、走り寄る。
 
!カノン様とサガ様、すごいことになってるね。」
 
「そうね。危ないからあまり顔を出してはダメよ。」
 
「は〜い。」
 
 
 
 
そして衝撃音に気付いたものの、動じず酒を酌み交わす者が2人。
 
童虎とシオンである。
 
「シオンよ。外が何やら騒がしいの。」
 
「奴らの喧嘩はいつものことだ。見る気も起きぬ。」
 
「しかし、きっかけは であるからのう・・・。」
 
「うむ。何とかせねばならぬか・・・。」
 
童虎の言葉にシオンはやっと重い腰を上げた。
 
「よさぬか!!2人とも。」
 
「シオン様、手出しは無用でございます。これはカノンと私の問題です。」
 
そう言うとサガは小宇宙を燃やしはじめた。
 
カノンも負けじと小宇宙を増大させてゆく。
 
「サガ様とカノン様、黄金(きん)色に輝いてるよ〜〜! 。」
 
「私も初めて見たわ。こんな2人。」
 
感心したように2人を見つめる に突っ込みを入れる者は誰もいない。
 
そして双子の小宇宙が増大を続け、弾けようとした瞬間、シオンの怒りが爆発した。
 
その小宇宙は隣にいた童虎も気付かなかったほどの素早さで教皇宮を包む。
 
「うろたえるなーーー!!小僧どもーーー!!!!!」
 
サガとカノンはもちろん、見物していた黄金聖闘士たちもシオンの必殺技の餌食となった。
 
ただ1人を除いては。
 
「うわぁぁ〜〜〜っ!!何これ!!」
 
「シオン!!何てことするの〜!!」
 
も例外ではなく、シオンによって飛ばされた・・・が。
 
「余が を受け止めぬはずがないであろう?」
 
は次の瞬間、テレポートさせられシオンの腕の中にいた。
 
「大丈夫ですか? 。」
 
そして はシオンの弟子、ムウの腕に抱きとめられていた。
 
黄金聖闘士たちは咄嗟のことに全員気絶している。
 
もともと気絶していたアイオリアや眠っていたミロも例外ではなかった。災難としか言いようがないけれど。
 
 
 
 
 
「ムウよ。さすがは余の弟子じゃな。よく避けられたものよ。」
 
「いえ、もう慣れていますから。それに分かっていらしたのでしょう?私だけは避けるだろうと。」
 
「まあ良い。余は今から とゆっくり過ごすこととさせてもらう。」
 
「そうですか。では私は と過ごすことにしましょう。」
 
師弟の会話に が割って入った。
 
「シオン、ひょっとして確信犯なの?」
 
「余は を守ろうとしただけであるぞ?」
 
「そうね。ありがとう。」
 
微笑んだ を抱いたまま、シオンは十二宮の階段を降りてゆく。
 
「ムウ様。もう大丈夫ですよ?」
 
「そうですか。 。では私達も行きましょうか。」
 
「でも皆さんはどうするのですか?」
 
「大丈夫です。彼らも黄金聖闘士ですからね。」
 
そしてムウも と手をつないで教皇宮を後にした。
 
空からは白い雪がはらはらと舞い落ちて少しずつ聖域を白く染めはじめる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうやら今年のクリスマスはアリエス師弟のひとり勝ちらしい。
 
こうして聖域のクリスマスの夜は更けてゆくのであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
    END