いきなり雨が降ってきた。
 
外は土砂降りの雨だ。
 
もともと今日は、宮から出る気になれない。
 
だから、雨が降ろうとなかろうと、俺には関係ない。
 
 
 
パシャ、パシャ、パシャ。
 
 
 
誰かが雨の中を走る音。
 
どうやら、この宮に入ってきたらしい。
 
 
 
「誰だ?」
 
「あっ、シュラ様。おはようございます。です。」
 
「ああ。」
 
「シオン様に会いに行こうとしたんですが、いきなり雨が降ってきて、びしょびしょです。」
 
 
 
そう言って笑ったを、羨ましいと思った。
 
何の悩みも無さそうで。
 
 
 
「シュラ様。少し雨宿りしていってもいいですか?」
 
 
 
綺麗だと思う。
 
デスマスクやミロが「恋人にしたい」と言い出すのも、当たり前だ。
 
しかし、どうもの事は苦手だ。
 
はっきりとした理由があるわけではない。
 
できれば断りたい。
 
だが、
 
外は土砂降り。
 
はびしょ濡れ。
 
断ることは出来そうにないな。
 
 
 
「部屋に入れ。タオルを持ってくる。」
 
 
 
部屋に入ると、を出してくれた。
 
シュラ様が、私のことを敬遠しているのは感じている。
 
そんな相手の好みまで覚えているなんて。
 
なんて律儀な人だろう。
 
 
 
その隠された優しさに一人微笑むを無視して、シュラは窓枠に腰掛、外の世界に心を奪われていた。
 
その目に映っているのは、1つ下の宮。
 
彼が殺してしまった、アイオロスが守護する宮。
 
物憂げの原因。
 
 
 
「何を真剣に見ていっらしゃるのですか?」
 
「・・・・・・・・・・・」
 
「シュラ様?」
 
「・・・・・・・・・・・」
 
 
 
「そんなに、ご自分のなさった事が許せないのですか?」
 
「・・・・・・・・・・・何のことだ?」
 
「アイオロス様を・・・・・・・・。」
 
 
 
それ以上言うなとでもいいたげなシュラの目が、を捕らえた。
 
しかし、は言葉を続けた。
 
 
 
「殺してしまったことが。」
 
 
 
やはり、雨宿りなどさせなければ良かった。
 
よりのよって1番触れられたくない話題。
 
この後続く言葉も想像出来る。
 
デスマスクやアフロディーテに、嫌というほど言われた続けた言葉。
 
 
 
「何故、そんなにご自分を責め続けるのですか?
 
 仕方がなかったことでしょう?」
 
「・・・・・・・・・・・」
 
「シュラ様・・・・・・」
 
「・・・・・説明したところで、お前に分かるというのか?
 
 アイオロスは俺の兄貴分だった。
 
 そのアイオロスを殺してしまった俺の気持ちが、お前に分かるというのか?」
 
 
 
「シュラ様。シュラ様は、私を見ると嫌な気分になりませんか?」
 
「何故いきなりそんなことを聞く?」
 
「私は、シュラ様を見ていると少し嫌な気分になります。」
 
「だったら出て行け。」
 
「まるで、自分を見ているようだから。」
 
 
 
何を言っているのだ?
 
俺のことが嫌なのは分かった。
 
その後の言葉の意味は何だ?
 
 
 
「意味が分からないのだが?」
 
「私には、弟弟子がいたんです。」
 
「それがどうしたんだ?」
 
「今はいません。
 
 私が殺したんです。」
 
「!?」
 
「封印が解けて、体をのっとられて、アテナに反逆を企てたんです。
 
 殺すことでしか助けることが出来なかったんです。」
 
「仕方がなかったのだろう?」
 
「ええ。でも、私は誰が許しても、自分で自分が許せない。」
 
「何故そんなに自分を責め・・・・・」
 
 
 
シュラは言葉を途中で止めた。
 
それは、先程が自分に言ったことと同じ言葉だったから。
 
 
 
は、シュラが左側に腰掛けているので、窓枠の右側に腰掛けた。
 
そして、シュラの手と自分の手を合わせ、向かい合った。
 
 
 
?」
 
「私たちは鏡を見ているようなものなんです。
 
 同じ罪を背負って自ら苦しんでいる。」
 
「だから、嫌な感じを受けると?」
 
「そうです。その苦しみが、いかに不毛なことか分かってしまうから。」
 
「・・・・・・・・・・」
 
「でも、シュラ様。
 
 いくら似ていても、鏡に映るのは虚像です。
 
 シュラ様と私は違うものです。」
 
「・・・・・・・何が言いたい?」
 
「シュラ様には謝る相手がいらっしゃるではありませんか。」
 
「謝りに行けと?」
 
「映すものが代われば、鏡に映るものも代わると思うんです。」
 
 
 
雨はとっくに上がってしまっていた。
 
なら、宮にとどまる理由はない。
 
少し出かけてみよう。
 
 
 
「アイオロス。」
 
「シュラか?珍しいな。どうした?」
 
「・・・・・・13年前のことを謝りたくて。・・・・・・すまなかった。」
 
「・・・・・・・・シュラ。気にするな。」
 
「しかし・・・・・・」
 
「実は、昔お前がもらったバレンタインのチョコを盗み食いしたのは俺だ。
だからおあいこだ。」
 
「何ーー!?あれはアイオロスだったのか?かなり楽しみだったんだぞ。」
 
「だからおあいこだ。すまなかったな。」
 
 
 
アイオロスは自分の罪を許してくれた。
 
これで俺は救われる。
 
だが、
 
だが、は・・・・・・・。
 
 
 
「シュラ様〜〜。」
 
 
 
階段を上る途中で、シオンに会った帰りであろうにあった。
 
笑顔で手を振っている。
 
 
 
何の悩みも無さそう
 
 
 
そう思っていた。なんて愚かだったんだろう。
 
今からでも間に合うだろうか?
 
を助けることが出来るだろうか?
 
 
 
「仲直りできましたか?」
 
「ああ。」
 
「良かったですね。」
 
「・・・・・・映すものが代われば、鏡に映るものも代わると言ったな。」
 
「はい。」
 
 
 
俺が代われば、も代わる。
 
は、自分を責めなくなるだろうか?
 
 
 
シュラはを抱き寄せ、キスをした。
 
 
 
「シュラ様!?」
 
「感謝の印だ。」
 
 
 
それと、契約の証。
 
俺がお前を助ける!!